交通死ー遺された親の叫びⅠ(2013~1998)

【コラムNo.013】2003/4/14 「大人の方へ」

投稿日:2003年4月14日 更新日:

長い冬から解放される四月。新入学や、新しい学年を迎えた子どもたちは期待と希望に心も躍る。

しかし、送り出す家族はその背中に「クルマに気をつけて」と一声かけずにはいられない。児童生徒が歩行中、あるいは自転車通行中に遭う輪禍は、道内で平均すると毎日五人が傷つき、毎月一人が亡くなるという深刻な実態がある。

昨年七月、札幌市西区の真下綾香ちゃん(当時小六)と白石区の音喜多康伸君(当時中二)が、相次いで通り魔殺人のような犠牲になった。何の落ち度もないのに、安全であるべき横断歩道上で。

ご両親は深い悲しみの中「こんな理不尽は許されない。事故と軽く扱うことなく、再発防止のために事実究明と厳正な処罰を」と、血のにじむ努力をして、要望書の提出や署名活動に取り組んでいる。

青信号の交差点を自転車で渡り切る直前、暴走する右折車の前部でひかれた綾香ちゃんの「事件」。同級生の父母は「信号を守っていたのに。私は子どもにどう教えて良いかわからなくなりました。人の命を奪っても、このくらいで済むという間違った考えを持たれぬよう、子どもにきちんと説明できる結果を望みます」と要望書に書いた。

横断歩道を自転車で通行中、安全確認もせず時速五〇キロものスピードで突っ込んできた車にひかれた康伸君。この「事件」を知ったある小学生は「大人のかたへ、ぼくたちがあんしんしてあるける社会にしてください」と要望書で訴えた。

許されない戦争で、恐怖におののくイラクの子どもたちの表情とダブるのは私だけだろうか。便利さや経済効率の名の下、逆立ちした「クルマ優先社会」は、被害者にしかなり得ない子どもたちにさえ被害の責任を押し付ける。子どもの命と安全を守りきることは、親とともに大人社会が担うべき最優先課題である。

(前田敏章=札幌・北海道交通事故被害者の会代表)
(「北海道新聞」2003年4月14日夕刊のコラム「プラネタリウム」に掲載)

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