交通死ー遺された親の叫びⅠ(2013~1998)

【コラムNo.003】2000/1/8「犯罪白書」にみる交通犯罪の扱いの軽さ

2000年1月8日

 1999年版「犯罪白書」を読んだ。日本社会の人権無視の異常さに慄然とした。一例を挙げる。

刑法犯検挙人員の罪名別構成比(p5)

 交通関係業過(「業過」とは業務上過失致死傷及び重過失致死傷のこと)が何と67.8% 刑法犯認知件数でも窃盗に次いで24.4%を占める
しかし、これだけの割合を示していながら、交通関係業過の動向についての記述はない。

第4章第2節「交通犯罪者の処遇」(p199)罪名別起訴・起訴猶予率の項(p478)

 起訴率低下の理由を臆面もなく列挙。異常なクルマ優先社会を端的に示すもの。1989年の39.8%から1998年には12.9%まで激減。寛刑化がここまできている。(二木氏の「交通死」によると1986年ごろまでは70%台であった)
 ちなみに1998年の全事犯での起訴率は61.9%。交通関係業過を除く全刑法犯では58.2%である。 

※ 起訴率低下の理由
 「特に傷害の程度が軽微で、かつ過失の態様が悪質でない事案については、

  1. 「国民皆免許時代」、「くるま社会」において、軽微な事件により国民の多数が刑事罰の対象となるような事態となることは、刑罰の在り方として適当ではないこと、
  2. 保険制度が普及し、治療費や修繕費に対する保険による補償が充実してきたこと、
  3. 交通事故の防止は、刑罰のみに頼るべきものではなく、行政上の規制、制裁をはじめ、各種の総合的な対策を講ずることによって達成されるべきものであること、及び
  4. 交通関係業過は、従来から、その多くが略式手続きによって処理され、小額の罰金が科せられていたが、このような事態は、罰金の刑罰としての感銘力を低下させ、刑事司法全体を軽視する風潮を招来するおそれがあること

などを理由に、検察庁において自動車等による業務上過失傷害事件の在り方等について見直しがされたことなどがあるものと考えられる。」(p199~200)

未成年者・60歳以上の者の死傷者数、発生件数(p243)

 いわゆる「交通弱者」の被害がどれだけなのか、わからない統計である。
 少なく見積もっても子ども、お年寄りが毎年20万人以上傷つけられ、5000人以上も殺されている。

罪名・死傷者別犯罪被害者数に「交通関係業過」が含まれていない。(p522)

 一体、何が特別で含まれないのか。最近「被害者対策」などとよく言われるが、交通事故については、数にも入れていないのであるから、実際は「対策」など無しということだろう。

交通事故の発生件数、死傷者数、事故率の推移(p243 およびp516)

 数字は深刻な事態の進行、人権侵害の恐ろしい実態を如実に語っている。決して「沈静化」などしていない。

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