交通死ー遺された親の叫びⅠ(2013~1998)

【コラムNo.032】 2012/8/27 今こそ危険運転致死傷罪など刑法の全面的見直しを(その2)

2012年8月27日

 8月22日、法務副大臣との面談が実現。法務省を訪れ、北海道交通事故被害者の会として「危険運転致死傷罪の適用要件緩和など交通事犯の刑罰適正化に関する要望」(添付。6月に提出済)について、谷博之法務副大臣に膝詰めで30分要請してきました。
今回の面談は、9月初めの法制審への諮問事項に危険運転致死傷罪の見直しが入るかどうかが、当面の焦点と思われ、急きょ申し入れたものです。
 面談内容は、下欄にコピーした北海道新聞の23日付の記事「危険運転致死傷罪十分に適用拡大を 被害者の会が要望」で報道された通りですが、本体の要望書を手渡し、次のことを強調し、要請しました。

■先ず、法制審への諮問事項として、危険運転致死傷罪の適用要件緩和(類型見直し、「故意性」立証の矛盾)など、危険運転致死傷罪の見直しが入るのかどうかという点の心配がありましたので、この点を、8月7日付北海道新聞報道の「(法制審で部会を設置し)危険運転致死傷罪の適用条件を拡大することの是非を議論し」という記事コピーを示して質しました。
 これに対し、谷副大臣は記事内容を否定しておりませんでしたので、論議の俎上にはあがるという感触を得たところです。しかし、これが、副大臣のリップサービスに過ぎず、私だけの感触であるのかもしれませんので、さらに声を上げ、確認を得ていく必要があると思います。その後は、当会の要望書に沿って、要望事項(1)~(5)を説明。私たちの積年の願いを縷々伝えました。

■被害者の尊厳にとって加害者への適正な刑罰は必須であること、
■交通死傷被害をゼロにするために命の重みに見合う刑罰が必要なこと、
■要望内容は、北海道の会が2002年(危険運転致死傷罪施行は2001年12月)に初めて作成した要望書の内容と、基本は変わらず、私たちは当時から危険運転致死傷罪の根本的矛盾を指摘し改正を求めていたこと。

■ポイントは交通犯罪をその被害の深刻さから特別の犯罪類型として重くすることであり、そのために、現行法体系では、危険運転致死傷罪の「故意性」の立証という矛盾を改め、自動車運転過失致死傷罪の最高刑を上げること、最低刑の罰金刑を有期刑に底上げするなどが必要であること、等述べ、現行のままでは危険運転致死傷罪は「絵に描いた餅」そのものであると強調しました。
■さらに、「逃げ得」解消(現行法では逃げて飲酒が咎められ無かった場合の最高刑と逃げないで飲酒による危険運転となった場合最高刑に開きがある)は、悪質交通犯罪防止に不可欠である。ことを述べ、最後に次の2点も指摘しました。
■法治社会において、法が第一義的に尊重し守るべきもの(法益)は人命であり、それ以上のものはないということが大前提であること。
■人命軽視のクルマ優先社会の背景に、「結果責任」ではなく、故意性など「意思責任」を問題にする近代刑法の誤りがあること(本ページのコラムNo.32)

 要請の中で、北海道でも飲酒ひき逃げや危険速度による事件が頻発し、危険運転致死傷罪の適用拡大を望む声が拡がっていることを述べ、北海道の仲間が、兵庫(生田さんの事件)や亀岡の事件遺族を支援し、街頭署名を札幌で行ったことを地元新聞記事で示すと、谷副大臣は、その記事を食い入るように見てくれていました。

 要望内容について谷副大臣は共感的に受け止めてくれたと思っていますが、先ずは入り口の法制審の諮問内容で閉ざさず、法制審という論議の場で、これまでの積年の思いと要望を伝えることが出来るように、他の交通犯罪被害者団体とも連携して働きかけることが必要と感じて帰ってきました。「被害者の視点が社会正義」という言葉を噛みしめながら・・・。

2012/08/23 北海道新聞朝刊

危険運転致死傷罪 十分に適用拡大を 被害者の会が要望

 北海道交通事故被害者の会は22日、アルコール・薬物の影響を受けた運転や意図的な信号無視などに限定されている、危険運転致死傷罪の適用条件を十分に拡大するよう求める要望書を法務省に提出した。

 無免許運転や飲酒ひき逃げによる死亡事故でも、「故意」の立証などが障壁となって同罪が適用されないケースがあり、滝実法相は適用条件の拡大に向け、9月の法制審議会(法制審)に刑法改正を諮問する方針。要望書は拡大範囲について、危険な運転行為一般に広げることなどを求めた。法務省で谷博之法務副大臣に要望書を手渡した前田敏章会長によると、谷副大臣は前向きな反応だったといい、「われわれの積年の思いが実現するよう、法制審でも思いを伝えたい」とした。

〈続報〉2012/09/08 北海道新聞

交通事故の厳罰化 法制審が検討着手 少年法改正も

 法制審議会(法相の諮問機関)は7日、法務省で総会を開き、悪質な交通事故に対する罰則の見直しについて検討に着手した。滝実法相は冒頭、「無免許運転や飲酒運転など悪質危険な交通死傷事案が社会問題となっているが、罰則や法定刑が国民の意識に合致しているのかと指摘がある」と述べ、早期に結論を出すよう要請した。

 審議会では、危険運転致死傷罪(上限・懲役20年)の適用要件緩和や、自動車運転過失致死傷罪(同・懲役7年)より刑の重い準危険運転致死傷罪の創設などが検討対象になる見通し。

 一方、少年法改正についても検討を開始した。有期刑の上限を5年延ばし、成人で無期刑となるような事件では、最高で20年の刑を科すことができるとの改正案を法務省がまとめており、この案が軸になる。

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