◆前号(会報14号)で報告した改正道交法は6月3日に成立しました。現在施行令の改正試案が出されており、年内にも施行されるとのことです。
◆中型免許新設と大型免許の受験資格年齢の引き上げ、飲酒運転の呼気検査拒否に対する罰則引き上げなど、一定の評価できる内容も含まれていますが、極めて不十分な改正と言わなくてはなりません。
◆その中でも、携帯使用の問題について憤りを感じます。実効のある罰則規定をとの期待は全く裏切られました。
◆改正道交法では、車中の携帯電話や画像表示装置を「手で保持して」通話のために使用したり、画像を注視した者が罰則の対象というのです。
◆運転中に携帯電話を使っても、両手を自由にできるイヤホンマイクを装置して「手に持たなければ」取り締まりの対象にもならないのです。
◆まさに骨抜きです。これを機にイヤホンマイクの売り込みに意気込む業者もあるそうです。
◆新聞やTVが、「『集中力そぐ』なお指摘も」(「道新」6/4)、「脳にも影響、『ながら運転』の危険」(「HBC」7/3放映)などと特集し、安全について警鐘を鳴らしたのは当然です。
◆その中で、専門家も次のように指摘します。「マイクを使ったとしても通話によって集中力がそがれる問題に変わりはなく、取り締まりの対象にしてもらいたい」(道自動車短大、茄子川教授「道新」6/4)
◆「ながら運転はヒトの脳の『注意の配分』を混乱させ、目は開いているが見ていない状態になる」(北海道大学医学部、澤口教授「HBC」7/3放映)
◆6年前、携帯電話使用で前方不注視となった運転者にご主人を奪われた副代表の内山孝子さんは、テレビ局の取材に「(携帯を使っている運転者に)『何をしているの』とどなってやりたい気持」と答えていました。
◆最近特に、携帯を「手で保持して」クルマを走らせる運転者が目に付きます。真剣に「被害ゼロ」への対策をとろうとしない社会は一体何なのでしょう。
◆考えてもみて下さい。自動式回転扉がいくら便利でも、死傷事故が1件でも起きれば社会的問題となり、その使用が見直されるのです。
◆携帯電話使用で年間2500件もの死傷事故が発生(うち死亡事故は昨年の場合34件)していると言われます。加害者は隠しますから、実際にはもっと多いでしょう。
◆命や人権を犠牲にしても、あくまで便利さのみを追求する倒錯した「クルマ優先社会」。これが真に見直される日はいつになるのでしょうか。(前)
(「北海道交通事故被害者の会」会報15号より)