交通死ー遺された親の叫びⅠ(2013~1998)

【コラムNo.034】 2013/4/10 「クルマ社会」の麻痺を根底から問う

2013年4月10日

~ 編集を終えて ~

■清水さん、佐々木さん、河合さん、山口さんはじめ、今号にも被害者遺族の痛切な叫びとたたかいの報告が続き、胸が痛みます。編集を行いながら何度も中断し、涙をぬぐい、怒りでこぶしを握りました。

■私もそうですが、被害者の会の仲間の方に、相手を気遣い、あるいはそうあって欲しいと思い「元気ですか」と声を掛けることがあります。しかし、一時的には元気であっても、生活や人生そのものにおいて元気を取りもどすことはあり得ないのです。私は、長女を喪って18年目になりますが、そのことを痛感しています。少しは元気になれた(元気にならなくてはと思う)部分と、さらに辛い気持ちになり深く落ち込む部分、まだら模様なのです。

■白倉裕美子さんは中高生への講話の中で「犯罪被害で奪われた命は、寿命でも運命でもない」と必ず伝えるそうです(会報38号)。「亡き肉親が天国で悲しまないようしっかり生きよう」皆、そう考えて必死に生活し生きていますが、どうしても納得できず許し難いのは、それが自分が選んだ生き方ではなく、他人の加害行為によって一方的に選ばされ強いられた人生ということです。もちろんその無念を一番感じているのは被害に遭った当の本人です。

■こんな不条理を、「仕方のない事故被害」と容認する社会を許しはならないと思います。何とか力を合わせて、麻痺したクルマ優先社会をその根底から変えなければという想いが募ります。

■p10の報告のように、小野さんなどのたゆまない奮闘で、「いのちのパネル展」の2012年開催日数は194日と過去最高でした。感想アンケートには、私たちの必死の訴えに共感し、凶器ともなっているクルマの使われ方に根底から認識を変えたという声が届けられていますが、そのような反応、そして大学生の山口紗季さんのとりくみレポートは、絶望に陥りそうな私たちにとって何よりの励ましであり希望です。

■パネル展と同様、2012年度の体験講話の回数と受講者数も、13年間の最高(86回、1万7,649人)でした。特に増えたのは中学校での講話で、これは、犯罪被害者等基本計画に基づいて、道警が「命の大切さを学ぶ教室」を本格実施したことに因ります。会からは主に3人で講師を受け持っていますが、2012年度は中学30校、高校20校を数え、聴講生徒数は1万5千人を超えました。

■将来を担う若者の真っ直ぐな眼差しと暖かくしっかりした感想レポートにいつも励まされますが、次は特に勇気づけられた高校生の感想です。

★「今回のこの貴重な講演の中で、命の大切さとともに、クルマの危険性をあらためて強く感じたわけですが、もっと感じたことは、日本の社会自体を変えなければいけないのだいうことです。
 交通事故が起こる要因として、加害者のクルマと人命への軽視が前提にあるのはもちろんですが、そういった人たちを産み出している社会、それを受け流すかのような刑罰の軽さなどによる国の対応、それらが背景に大きくあるように思いました。交通事故による死亡事故は、人が人を殺めているのではなく、国や社会が人を殺めているのではないかと痛感致しました。
 一人一人が“命”について知り、理解した上で、利便性ではなく、人も尊重した日本や世界をつくり上げていくことが何よりも大切であると思いました。前田さんの娘さんをはじめとする交通事故で亡くなられた尊い命が報われる社会や国に成っていくことを願うとともに、私たちが作り上げていかなければならないと、今を生きる私たちの責任を強く感じました。」

(2012/10/11苫小牧西高3年)

■「正義の声は届く」、このことを信じ、「こんな悲しみは私たちで終わりにして欲しい」という声を大きくしましょう。力を合わせて進みましょう。

北海道交通事故被害者の会会報41号(2013年4月10日)掲載の「編集を終えて」より

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