交通死ー遺された親の叫びⅠ(2013~1998)

【コラムNo.026】 2009/7/13 「世界最先端研究の支援」をいうなら、「交通死傷ゼロ」に直結する、共生の交通社会のための速度制御カーとそのシステム研究を

2009年7月13日

政府は・・・「先端的研究を推進して実現してほしいこと」に関する意見を募集

 政府は「経済危機対策」に基づく平成21年度補正予算の中で盛られた「世界最先端研究支援強化プログラム(仮称)」を実施するとして、2009年6月12日、この施策に関し、「科学技術の発展により実現して欲しいこと」について、国民への意見募集を公示した。

 施策の目的は「国際競争力の強化等」であり、「将来、日本が世界をリードできる研究を政府が支援する」というもので、多年度にわたり、使いやすい研究資金として2,700億円の基金を創設するという。

 ネットの募集ページから以下の意見を提出した。(7月12日)

私の意見・・・道路交通死傷ゼロへ、速度制御カーと速度管理システムで、脱スピード社会を実現する研究を

■分野
「交通・運輸」
■テーマ
「道路交通死傷被害ゼロ」実現へ、速度制御カーとこれを実効あるものにするためのインフラ整備に関する研究
■意見

 近代産業社会が成立し、モータリゼーションが進む中、人々の行動範囲は飛躍的に拡がり、欲しいものがより早く手に入る時代となった。しかし、この便利さを享受する影で、豊かさの代名詞であるクルマがもたらす悲惨な死傷被害が深刻である。

 

 我が国において、2007年に生命・身体に被害を受けた犯罪被害者数は110万8,881人であるが、このうち何と93.8%(104万0189人)は道路交通の死傷である(厚生統計の死亡者数は8,268人)。世界全体でも、2002年の1年間に120万人もの死者を生み、負傷者は5,000万人にも上る(WHOの報告)と言われ、国連とWHOは2005年、毎年11月の第3日曜日を「World Day of Remembrance for Road Traffic Victims(世界道路交通犠牲者の日)」と定め警鐘を鳴らしている。「交通戦争」という言葉は死語とはならず、「静かに進行する大虐殺」の克服は、まさに世界的な緊急課題である。

 

 人間性が発揮される豊かな社会の実現には、先ず、生命・身体の安全が護られなくてはならない。そして、人間が作り出した機械であるクルマが人を殺傷し続けるという事態は異常であり、被害根絶の使用法を直ちに確立しなければならない。政府は「世界一安全な道路交通の実現を目指す」という目標を掲げたが、その目標数値は「死者数半減」ではなく「死傷被害ゼロ」として、抜本対策に着手すべきである。

 

 抜本対策の一つが、自動車の過度なパワーと速度の制御である。20世紀の市場主義社会は、便利、効率、開発、そしてスピードの価値を優先して押しつけ、人々の理性をスポイルさせてきたが、今こそ運輸に支配された「高速文明」の幻想と矛盾から脱するべきである。安全と速度の逆相関関係は明白である。歩行者や子ども、お年寄りが通行する生活道路で、ハードなクルマが危険速度で疾駆する日常は、その根本から変えなくてはならない。全てのクルマに、道路状況によって安全な速度に制御されるリミッターが装備されるべきである。例えば、住宅地や商業施設のある通りは、時速20~30キロに設定し、そのことを外に示しながら走行する。通行の優先権はクルマではなく、歩行者に与えることなどである。現在検討されているITSは、ハードな高速走行を前提とする限り矛盾を生む。被害ゼロを根底に置いた速度制御カー(ソフトカー)とそれに実効性を持たせる社会的インフラとしての速度監視システムの開発研究を提案する。

 

 理性による共生の交通社会実現のため、本研究テーマこそ「世界最先端研究支援」に相応しいものであり、世界をリードし、世界から賞賛されるものであると確信する。

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