交通死ー遺された親の叫びⅡ(最新〜2013) 交通死傷ゼロへの願い

「隠れ人身事故」の問題が国会で取り上げられ、国家公安委員長が背景の把握を明言しました

2021年6月7日

 本サイトの(2021/2/9アップの)ブログ記事(「交通事故は本当に減っているのか?」刊行に励まされ)および北海道交通事故被害者の会の会報(63号p10)でも問題提起した交通事故負傷者数の統計上の「乖離」問題が、6月4日の衆議院内閣委員会において塩川鉄也議員によって取り上げられ、小此木国家公安委員長は、「(乖離が生じている背景について)把握に努めるよう警察を指導する」と述べ、検証を約しました。

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1 青野渉弁護士の問題提起が発端、加藤久道氏の著作と連動

 質問に立ったのは共産党の塩川鉄也議員です。塩川議員は、4月17日に市民団体「クルマ社会を問い直す会」が主催しオンラインで行われた青野渉弁護士(札幌弁護士会)の講演「交通犯罪の裁判の現状と問題点」からこの問題を把握され、国会質問に至ったということを(問い直す会より)聞き及んでいます。
 青野弁護士が問題点として挙げ、塩川議員が取り上げたのは、近年(特に2007年以降)の交通事故の負傷者数統計が警察庁の負傷者数と自賠責保険の傷害件数の間に大きな乖離(警察庁の統計発表数が極端に少ない)があることの問題です。
 青野弁護士は前記講演で、警察官が被害者に診断書を提出しないように勧めている結果「隠れ人身事故」が増えているからではないかと問題提起し、政府が誤った統計をもとに交通安全基本計画など重要な計画策定に当たることの問題も指摘しておりました。
 同様の問題提起は昨年末、保険評論家の加藤久通氏も、書籍『交通事故は本当に減っているのか?』(花伝社、2020年12月10日)刊行という形で為されておりましたが、塩川議員はこの著書についても調べて下さり、国会質問に反映されておられます。

『交通事故は本当に減っているのか?』(花伝社)

『交通事故は本当に減っているのか?』(花伝社)

2 塩川議員の指摘に、小此木国家公安委員長は「(乖離の)背景把握を指導する」と検証を明言

 内閣委員会での質問と答弁の記録は、下記公式サイト「衆議院TVインターネット審議中継」から視聴できます。(塩川質問は約20分ですが、最初の3分は別テーマです)

衆議院TVインターネット審議中継 2021年6月4日 (金) 内閣委員会

 私も視聴しましたが、正味17分の短い時間ではありましたが、塩川議員は、

  • 負傷者数は、自賠責保険の支払件数のほうが実態を反映しているのではないか。道路交通事故統計の信頼性が問われる。
  • 警察官が人身事故扱いにしないケースが増えているのではないか。警察行政の信頼性が問われる。検証を求める。

などと、鋭く指摘と追求を展開されています。

 私が特に重要と感じたのは、交通被害の実態は自賠責保険の支払件数がよりリアルに反映しているのではないかという指摘に、正面からの反論は無かったこと、そして冒頭にも記した、小此木(おこのぎ)国家公安委員長が後半の答弁で、「(乖離が生じている背景について)把握に努めるよう警察を指導する」と検証を約したことです。

3 質問の中で、北海道交通事故被害者の会のパブリックコメントが引用されました

 塩川議員は、青野弁護士と加藤久通氏の問題提起を基に追求をされましたが、発言の中では、北海道交通事故被害者の会として提出した下記「第11次交通安全基本計画中間案へのパブリックコメント」(12月20日提出)の内容も、調査され引用されていたことは驚きでした。
(この経緯等についても前記本サイトのブログ記事「『交通事故は本当に減っているのか?』刊行に励まされ」に記していますので参照下さい)

〈会のパブリックコメント〉
「会の要望意見を12月10日の公聴会で述べましたが、その後刊行された書籍、加藤久通著「交通事故は本当に減っているのか?」(花伝社2020年12月刊)によって、新たな事実~政府統計が、特に2007年以降、実際の人身事故の一部を統計に加えず「隠れ人身事故」をもたらしている~が示されましたので、以下、追加意見を提出します。
 中間案p9の「令和元年中の死傷者数は464,990人」との警察庁統計の記述は、被害の甚大さと深刻さを覆い隠します。現状分析を正確にし有効な対策を練るという、本計画の根幹に関わりますので、負傷者数は、損保料率機構の「自賠責傷害件数」を用いるべきと考えます。「損害保険料率算出機構統計集 2019年度」による同年の傷害件数は1,006,272件であり、警察庁統計の負傷者数461,775人との乖離率は0.46にも達するからです。本意見を加え、先の公聴会での当会意見の反映を切に願います。」

 今回の国会審議に大変励まされました。当サイトにおいても、交通死傷被害ゼロを願い、皆さまとともに、今後とも粘り強く訴えていきたいと考えています。

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