交通死ー遺された親の叫びⅡ(最新〜2013) 世界道路交通被害者の日

世界道路交通被害者の日 いのちのパネル展 の報告

2020年11月26日

 11月第3日曜日(15日)は、国連が2005年に決議した世界道路交通被害者の日(World Day of Remembrance for Road Traffic Victims)でした。

東京では、今年も「キャンドル イブ」

 東京では、今年も14日夕、「東京フォーラム キャンドル イブ」(呼びかけ人:小栗幸夫氏など)が、東京タワー前の芝公園で行われました。(写真)

「東京フォーラム キャンドル イブ」の様子

「東京フォーラム キャンドル イブ」の様子

札幌では、地下街で「いのちのパネル展」を7日間開催

 北海道では、例年、北海道交通事故被害者の会が「北海道フォーラム・交通死傷ゼロへの提言」を開催していましたが、今年はコロナ禍のために中止を余儀なくされ、毎年ワールドディに連帯して開催している地下街での「いのちのパネル展」のみの開催となりました。

11月10~15日 札幌地下街 オーロラスクエア

11月17日 札幌駅前通地下歩行空間

メディアも取り上げてくれました

 いのちのパネル展(いのちのパネル実行委員会主催)は、「このような被害は二度と起こして欲しくない」という願いを込めた25枚のメッセージパネルですが、通りすがりの方たちの多くが足を止め、写真とメッセージに見入っていました。
 これを、北海道新聞(11月11日、下記)と読売新聞(11月13日)が記事に取り上げ、NHKとTvh、STVが道内ニュースで報じてくれました。

北海道新聞 2020年11月11日

【一口メモ】世界道路交通被害者の日

 ワールドディは、1993 年にイギリスのNGO「ロードピース」が始めたもので、2005年の国連総会が、11月の第3日曜日をWorld Day of Remembrance for Road Traffic Victims(世界道路交通被害者の日)とすることを決議。国連は2011年から「追悼から行動へ、道路安全のための行動の10年」を提唱しています。
 日本では2008年からシンポジウムや追悼行事が行われるようになり、北海道、東京、大阪、秋田、熊本など全国に広がっています。北海道フォーラムは2009年から「交通死傷ゼロ」をテーマに、講演とシンポを開催。2013年より「交通死傷ゼロへの提言」を採択しています。2020版は以下。

交通死傷ゼロへの提言

交通死傷ゼロへの提言

2020’sWorld Day of Remembrance for Road Traffic Victims
2020年11月  北海道交通事故被害者の会

 近代産業社会がモータリゼーションとともに進行する中で、人々の行動範囲は飛躍的に拡がり、欲しいものがより早く手に入る時代となりました。しかし、この利便性を享受する影で、「豊かさ」の代名詞であるクルマがもたらす死傷被害は深刻で、命の重さと真の豊かさとは何かという問いが突きつけられています。
 わが国において2018年に生命・身体に被害を受けた被害者数は55万6029人ですが、このうち何と95%(52万9378人)は道路交通の死傷(死亡者数は4,166人)です。
 この「日常化された大虐殺」ともいうべき深刻な事態に、被害者・遺族は「こんな悲しみ苦しみは、私たちで終わりにして欲しい」と必死の訴えを続けています。人間が作り出した本来「道具」であるべきクルマが、結果として「凶器」のように使われている異常性は即刻改められなければなりません。このような背景から、国連は11月の第3日曜日を「World Day of Remembrance for Road Traffic Victims(世界道路交通被害者の日)」と定め警鐘を鳴らしています。
 私たちは、未だ続く「事故という名の殺傷」を根絶し、「日常化された大虐殺」という言葉を過去のものとするために、以下の諸点を中心に、わが国の交通安全施策の根本的転換を求めます。

第1交通死傷被害ゼロを明記した目標計画とすること

 憲法が第13条で定めているように、人命の尊重は社会の第一義の課題です。平成28年3月策定の「第10次交通安全基本計画」の基本理念には「究極的には交通事故のない社会を目指すべきである」とされていますが、「究極的には」でなく、中期目標としてゼロの実現を明記し、政策の基本に据えるべきです。
 「減らせば良い」ではなく、根絶するにはどうするかという観点から、刑法や道路交通法など法制度、道路のつくり、対歩行者を重視した車両の安全性確立、運転免許制度、交通教育など関係施策の抜本的改善を求めます。自動車運転処罰法も、人の死傷という結果の重大性に見合う内容へとさらなる改正が必要です。
 「交通死傷被害ゼロ」は、理想論ではなく、西欧などにおいてその具体的取り組みが進んでいます。スウェーデンでは、交通による死亡もしくは重症の外傷を負うことを根絶するという国家目標を「ヴィジョン・ゼロ」という名のもとに国会決議として採択しています(1997年)。人口532万人のノルウエーでは2019年に15歳以下の子どもの交通死がゼロでした。

第2 クルマの抜本的速度抑制と規制を基本とすること

 これまでの長い苦難の歴史から私たちが学んだ教訓は、利便性、効率性、そしてスピードという価値を優先して追求してきた「高速文明」への幻想が人々の理性を麻痺させ、真の豊かさとは相容れない危険な社会を形成してきたということです。安全と速度の逆相関関係は明白です。命の尊厳のために、施策の基本に速度の抜本的抑制を据えるべきです。
 不確かな「自動運転車」に幻想を与えるのではなく、今あるクルマの速度規制が急務です。クルマが決して危険速度で走行することがないように、クルマ自体に、段階ごとに設定された規制速度を超えられない制御装置(段階別速度リミッター)や、ドライブレコーダー装着を義務化し、速度と安全操作の管理を徹底すべきです。
 さらに、道路ごとの制限速度に応じて自動で速度抑制を行う技術(ISA : Intelligent Speed Adaptation 高度速度制御システム)の実用化や、衝突被害軽減ブレーキなど「高度安全運転支援車」の普及による二重三重の安全施策を早急に実施すべきです。

第3 生活道路における歩行者優先と交通静穏化を徹底すること

 子どもや高齢者の安全を守りきることは社会の責務です。人口当たりの歩行者と自転車の被害死が諸外国との比較において極めて高いのが現状であり、歩行者を守るためにまず取り組むべき課題は、生活道路における歩行者優先と交通静穏化(クルマの速度抑制)です。
 道路や通りは住民らの交流機能を併せ持つ生活空間であり、決してクルマだけのものではありません。子どもや高齢者が歩き自転車が通行する中を、ハードなクルマが危険速度で疾駆し、横断歩道での歩行者優先(道交法38条)が守られていないなどの現状は、その根本から変えなくてはなりません。幹線道路以外のすべての生活道路は、通行の優先権を完全に歩行者に与え、信号のある全ての交差点を歩車分離信号に変え、クルマの速度は少なくても30キロ以下に一律規制(「ゾーン30」など)し、さらに必要に応じて道路のつくりに工夫を加えて、クルマの低速走行を実現しなくてはなりません。この考え方が欧州の常識であり、ドイツやオランダ、イギリスなどにおいて完全に実施されている都市もあります。
 このような交通静穏化は歩行者優先の理念の「学び直し」の第一歩であり、ひいては幹線道路の交差点における死傷被害の抑止に結びつくはずです。
 同時に、財源措置を伴う公共交通機関の整備を進め、自転車の更なる活用と安全な走行帯確保を緊急課題と位置づけるなら、道路の交流機能は回復し、コンパクトな街並みは活気を取り戻すでしょう。
 交通死傷被害ゼロのために、現行の交通システムを安全なものに改善することは、住民の生活の質をも豊かにし、すべての市民の基本的人権の保障につながるのです。

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