交通死ー遺された親の叫びⅡ(最新〜2013) 交通事件

【報告】旭川飲酒暴走事件(その1)2016.6. 危険運転への訴因変更を求めます!

2016年6月17日

2016年6月16日放映のHTB(北海道テレビ放送)ニュース(画像は本HPのトップに)

大量飲酒と異常な高速度であるのに「過失」とは!!!
ご遺族は危険運転への訴因変更を切望

 2016年5月4日、旭川市の国道で起きた中島朱希(あき)さん被害事件に対し、旭川地方検察庁は、5月26日、不当にも「ハンドル操作のミス」であるとして過失運転で起訴しました。
 地検から、この信じられない「説明」を受けたご遺族は、到底納得できないとして、高石さんなど同じ被害遺族に相談。被害者参加弁護士に青野渉弁護士を依頼し、危険運転罪への訴因変更を強く求めています。

※ 本件事故は、報道その他の情報によれば次のような事故です。(「要請書」より)

  1. (1)被告人は、朝からビールを飲み続けたうえで、自動車の運転を開始し、さらに自動車の運転を開始してからも飲酒をし、本件事故を引き起こしています。
  2. (2)事故後の飲酒検知の結果では、道路交通法の基準値の3倍の呼気中のアルコール濃度でした。
  3. (3)被害者遺族の関係者が事故現場で目撃した際には、被告人はふらふらの状態で「シャキッとしろ」と警察官から言われていました。
  4. (4)事故そのものは、緩やかな右カーブが終わった後の交差点で、被告人運転の自動車が、2台の車を急加速して追い抜いた直後、時速100キロメートルないし120キロメートルの速度で中央分離帯に衝突して右前輪がはずれ、制御を失い、円弧を描きながら自車線を移動し、最後は中央分離帯を飛び越えて、対向車線を走行していた中島朱希さん運転の自動車に衝突したとのことです。
  5. (5)なお、飲酒運転の常習者であったとの目撃者のインタビューも報道されていました。

6月16日、小樽事件を取り組んだ有志は、遺族とともに、旭川地検に「要請書」を提出

 この件について、一昨年の小樽ドリームビーチの事件で要請・署名活動を(全国からのご支援も受けて)取り組んだ有志は、急きょ「中島朱希さん被害死事件 被害者等連絡会」として、旭川地検宛て要請書を作成。6月16日、青野弁護士の助力も受け、旭川の山下さんが同行して地検宛提出しました。

   ⇒⇒⇒ 旭川地検宛て「要請書」

 今回の旭川地検の消極姿勢は、小樽飲酒ひき逃げ事件での札幌地検の初期対応に似ています。小樽事件は、本ページに経緯の詳細を記していますが、札幌地検は当初、脇見による過失運転で起訴、その後私たち被害遺族の要請や全国からの署名もあって危険運転罪へ訴因変更、2015年12月の札幌高裁判決で懲役22年の裁決が出されています。
 「脇見」(小樽)と「ハンドル操作のミス」(旭川)の違いだけで、危険運転の本質は何ら変わらないのに、旭川地検が小樽事件の経緯や意義を踏まえず、訴因変更をしないとすれば、刑事司法への信頼は地に堕ちます。
 旭川地検は、一日も早く危険運転罪へ訴因を変更し、裁判員裁判を提起すべきです。

「要請書」の要旨

 以下は上記旭川地検宛て「要請書」の要旨です

 平成28年5月4日午後7時ごろ、北海道旭川市の国道で、対向車線を走行していた中島朱希(あき)さんの車に激突し死亡させた石崎勝彦容疑者の行為は、飲酒(事故後の検知で0.45mg、基準値の3倍)の上、時速100キロ超の異常な高速度で交差点に進入し、表示灯のある中央分離帯に衝突し、制御を失いこれを越えて対向車線に飛び込むという、正に「二重の危険運転」を犯した重大犯罪です。
 旭川地方検察庁は本件を、容疑者の直近の過失である「ハンドル操作のミス」が主原因であるとし、過失運転致死罪で起訴しましたが、この判断は平成18年8月25日のいわゆる「福岡海の中道大橋事件」に関する最高裁決定(平成23年10月31日)に反します。
 上記決定は、条文の危険運転罪(自動車運転処罰法2条1号)の「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」の意味について、ハンドル、ブレーキ等の操作という身体の運動機能だけでなく、そのような操作の前提となる認知機能全般や、判断力、注意力の低下など「前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処すること」が正常に行えないことも含まれることを示し、直接の過失が「脇見」(本件の場合は、ハンドル操作のミス)であっても「認定」は可能であるとし、さらには、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」の認定の指針を、「事故の態様のほか、事故前の飲酒量及び酩酊状況、事故前の運転状況、事故後の言動、飲酒検知結果等を総合的に考慮すべきである。」と明示し、何より重視したのは「事故態様が正常な状態にある運転者では通常考え難い異常なものかどうか」であること、としました。

 従って、冒頭(1)~(5)に記した、交差点後の中央分離帯に異常な高速度で衝突した被告の行為が「正常な運転が困難な状態」に相当することは、通常の市民感覚からしても明らかです。

 また、一般道の交差点を時速100キロ以上で走行し死亡事件に至った被告の行為は、危険運転罪2条2号(「進行を制御することが困難な高速度」)の適用も十分可能と考えます。

 このままでは、「これだけ滅茶苦茶な飲酒・暴走運転をして人の命を奪っても、単なる『過失』で済む」と、検察庁が国民にメッセージを出すことになり、「自動車運転処罰法」の意義そのものが問われます。

 何より被害者の命の尊厳から、そして危険運転致死傷罪の立法趣旨から、さらに飲酒や危険速度などによる交通犯罪被害根絶のために、本件を危険運転致死罪に訴因変更されるよう強く求めます。

旭川地検の現時点(6月24日)の対応には、数々の問題が指摘されます

 一番の問題は、当然当初から危険運転罪で起訴すべき事案を、福岡事件の最高裁決定という判例もありながら、極めて消極的に過失運転で起訴したことですが、加えて、無念の中島朱希さんのご遺族に二重三重の心痛を与えているのが、必死の思いで、訴因変更を求める要請書を提出した6月16日から1週間を経た現在の旭川地検の対応です。
 旭川地検は、中島さんと代理人弁護士に、訴因変更を検討するために再捜査を始めました、と言いながらも、来月19日の公判期日(7月19日)をそのままにしており、中島さんご遺族を、「このまま時間だけが過ぎて、7月19日のギリギリになって、『やっぱり無理でした。』で終わってしまうのではないか?」との大変な不安と不信の中に落とし入れているのです。

 検察庁のとるべき(被害者等への)対応で、思い起こして欲しいのが、平成26年10月21日の最高検通達「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」と部長通知「『犯罪被害者等の権利利益の尊重について』の発出について」です。
 この主旨を理解するなら、当然、中島さんに現在の不安や不信を感じさせている7月19日の公判期日設定は、少なくとも保留として、慎重な再捜査に当たるべきです。

※最高検通達とは(関係文は後段に記します)

 法務省が被害者参加制度などを定めた平成19年刑事訴訟法の3年後見直しに関して開催してきた意見交換会(平成25年1月から26年7月まで計12回開催。被害者団体・ハートバンド代表として前田も意見提言しました)での指摘や意見を踏まえたもので、公判前整理手続に「傍聴」参加の道を開くなど貴重な前進面を含みますが、後段の関係文のように、「犯罪被害者等が適切かつ効果的に刑事手続き等に関与することができるようにするため・・・なお一層の配慮がなされるよう」(部長通知)、「起訴・不起訴、公判請求・略式請求、訴因及び罰条の構成といった事件処理に関する要望についてはより一層の配慮~被害者等の要望にも十分配慮した事件の適正な処理とその説明~が必要であり、公益の代表者として真摯に対応することが求められる。」(部長通知)
などと、具体的に通達・通知されています。
      通達・通知の要点は ⇒⇒ 「最高検通達および部長通知の要点
      詳細は本ページ ⇒⇒⇒ 【報告】刑訴法(被害者参加制度)意見交換会と最高検通達」参照

報道記事および関係資料

 以下報道記事および関係資料です。

※ 要請書提出を報じる、NHKとHTBと北海道新聞の報道記事

NHKニュース 2016年6月16日

飲酒事故 遺族が重い刑を要望

 先月、旭川市で飲酒運転の車による事故で死亡した女性の遺族が、過失運転致死などの罪で起訴されている相手の男により刑の重い危険運転致死罪を適用するよう検察庁に要望しました。
 先月4日、旭川市末広の国道で、乗用車が中央分離帯を越えて対向車線を走ってきたワゴン車と正面衝突し、ワゴン車を運転していた旭川市の小学校教諭、中島朱希さん(38歳)が死亡しました。
 この事故で、乗用車を運転していた上川の東川町の農業、石崎勝彦被告が、16日までに過失運転致死と酒気帯び運転の罪で起訴されています。
 これについて16日、中島さんの遺族などが「被告は飲酒によって正常な運転が困難な状態だったうえ、時速100キロ以上の無謀な運転をしていた」として、旭川地方検察庁に、より刑の重い危険運転致死罪を適用するよう要望しました。
 過失運転致死と酒気帯び運転が適用された場合、刑の上限は懲役10年ですが、危険運転致死罪は懲役20年と刑が大幅に重くなっています。
 要望を行った中島さんの夫は取材に対し、「過失運転致死で裁かれてしまえば、飲酒運転はたいした問題ではないという社会への誤ったメッセージになりかねない。過失ではないことを認定して法を適用してもらいたい」と話しています。

HTBニュース 2016年6月16日

遺族が「危険運転致死罪」への変更求め要請書

 先月に旭川で起きた飲酒死亡事故で、遺族らが被告の男に対し過失運転致死罪からより刑の重い危険運転致死罪へ変えるよう求め、16日、旭川地検に要請書を提出しました。

 要請書を提出したのは先月、旭川市で猛スピードで走る飲酒運転の車に衝突されて死亡した中島朱希さんの遺族らです。旭川地検は事故の原因は「ハンドル操作のミス」だとして運転していた石崎勝彦被告51歳を過失運転致死などの罪で起訴しました。これに対し遺族らは「ハンドル操作ができなかったのは酒の影響だ」として、より刑の重い「危険運転致死罪」の適用を求めています。朱希さんの夫は「同じ運転する一人の人間としてありえない運転だなと思う。僕の感覚では殺されたのと同じであり、非常に残念で怒りでいっぱいだ」と無念の思いを語りました。石崎被告の裁判は来月19日に始まる予定で、罪名の変更について旭川地検は「捜査の内容に関わるのでコメントできない」としています。(20:13)

北海道新聞 2016年6月17日

「危険運転」適用を
旭川飲酒事故 遺族ら地検に要請

【旭川】旭川市内の国道で5月に飲酒運転の乗用車とワゴン車が正面衝突し、ワゴン車の同市内の小学校教員中島朱希(あき)さん(38)が死亡した事故で、中島さんの遺族らが16日、自動車運転処罰法違反(過失致死)などの罪で起訴された上川管内東川町、農業石崎勝彦被告(51)に対し、より量刑が重い同法の危険運転致死罪を適用するよう旭川地検に要請した。

 起訴状によると、石崎被告は5月4日、酒気を帯びた状態で乗用車を運転し、中央分離帯に衝突。その後、対向車線にはみ出してワゴン車と正面衝突し、中島さんを死亡させたとしている。

 要請したのは、中島さんの夫康博さん(43)と父親(66)、支援者。要請書では「被告は飲酒により正常な運転が困難な状態だったことに加え、一般道を時速100キロ以上の無謀な高速度で運転していたのは明白」として、訴因変更を求めた。

〈 当初の報道記事 〉
北海道新聞 2016年5月6日 夕刊

女性死亡事故 酒気帯びか

 【旭川】旭川市内の国道で4日夜、乗用車とワゴン車が正面衝突し、ワゴン車の小学校教員の女性(38)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致傷)容疑で現行犯逮捕された上川管内東川町、農業石崎勝彦容疑者(51)の呼気から、酒気帯び運転の基準値を超えるアルコールが検出されたことが6日、道警への取材で分かった。旭川中央署は道交法違反(酒気帯び運転)での立件も視野に捜査を進めている。
 同署は同容疑者の車が対向車線にはみ出したとみており、飲酒の状況や経緯などを詳しく調べている。
 同署は6日午後、容疑を自動車運転処罰法違反(過失致死)に切り替えて、石崎容疑者を送検した。

※要請書は、中島朱希さんのご遺族と、高石さん(飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会 共同代表)、山下さん(旭川在住遺族)、白倉さん(交通事故調書の開示と公正な裁きを求める会 代表)、原野さん(小樽事件遺族)、前田(北海道交通事故被害者の会 代表)の連名で作成しています。

※関係条文「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転処罰法)の一部抜粋

(危険運転致死傷)
第二条 次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
一 アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
二 その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
三 その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
四 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
五 赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
六 通行禁止道路(道路標識若しくは道路標示により、又はその他法令の規定により自動車の通行が禁止されている道路又はその部分であって、これを通行することが人又は車に交通の危険を生じさせるものとして政令で定めるものをいう。)を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為

第三条 アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を負傷させた者は十二年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は十五年以下の懲役に処する。
2 自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものの影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた者も、前項と同様とする。

(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

最高検通達「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」(平成26年10月21日)
の関係部分抜粋 (下線はHP管理者)

【前文】
・・・このような指摘や意見を踏まえ、今一度各制度の趣旨を再認識するとともに、検察の理念が「犯罪被害者等の声に耳を傾け、その正当な権利利益を尊重する。」ことを基本姿勢の一つとしていることに思いを致し、被害者参加制度の対象となる者を含め広く犯罪被害者等に対してなお一層の配慮に努められたく・・・

【1 捜査・処理】
また、捜査の過程において、被害者等から、起訴・不起訴の判断や起訴事実の内容等の事件の処理に関する要望が示された場合には…要望にも十分に配慮した事件の処理に努めるよう配意されたい。

〈関連の部長通知〉
起訴・不起訴、公判請求・略式請求、訴因及び罰条の構成といった事件処理に関する要望についてはより一層の配慮~被害者等の要望にも十分配慮した事件の適正な処理とその説明~が必要であり、公益の代表者として真摯に対応することが求められる。
要望に沿う事件処理ができない場合には、丁寧に説明し理解を得る努力が必要。

 ※ 上記の下線部「訴因及び罰条の構成」は、この部長通達で新たに付加されたものです。この度の旭川地検の対応は、この通達・通知の主旨にも反します。

【3 主張・立証の証明(1)】
公判請求をした場合には、当該事件の被害者等の要望に応じて、…、適宜の時期に、公判における検察官の主張・立証の内容を分かりやすく説明するように努められたい。

〈関連の部長通知〉
被害者等が,自己を被害者等とする事件の真相を知りたいと思うのは当然のことであり,刑事司法が「事件の当事者」である生身の被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有するものである以上,真相解明の途上である捜査段階においては十分な説明は困難であっても,事件を公判請求した場合には,当該事件の被害者等の要望に応じて,公判における検察官の主張・立証の内容を分かりやすく説明するのが相当である。

【4 主張・立証する事項に関する要望に対する配慮】
被害者等から、検察官が公判において主張・立証する事項についての要望が示された場合には…要望にも十分に配慮した主張・立証に努められたい。被害者等の要望に沿う主張・立証ができない場合には、…その理由について丁寧に説明し、被害者等の理解を得るよう努められたい。

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