交通死傷ゼロへの願い 交通死ー遺された親の叫びⅡ(最新〜2013)

【訴え】高速道路の120キロ容認は大問題、犠牲ゼロに規制の徹底を

投稿日:2016年3月27日 更新日:

高速道路の120キロ容認

警察庁は、高速道路の最高速度を、広く事故が少ないといった条件を満たす一部路線について、現行の100キロから120キロへの引き上げ容認を決めました。

3月24日に発表されたこの方針について、朝日新聞の取材を受け、大きな問題があることを指摘。3月25日の記事(後掲)には、北海道フォーラムで2度講師をお願いした小栗幸夫教授の指摘とともに記載されました。

交通事故で高校2年の長女(当時17)を亡くした北海道交通事故被害者の会(札幌市)代表の前田敏章さん(66)は「速度が速いと危険回避に手間取り、重大な事故につながる。違反が常態化しているといって規制速度を上げるのはおかしいし、事故率が高くないから安全だとはならない。事故による犠牲者は一人も出してはいけない」と話す。
 速度制限の研究をしている千葉商科大学の小栗幸夫教授(都市交通計画)は「高齢ドライバーの増加で低速で走る車が増えることを考慮していない」と指摘。「高速で走る車と低速の車が今より混在し、速度差も大きくなる。追い越しで加速や減速をする機会が増え、接触の危険性が高まるのでは」と推測する。。

※ 同紙デジタル版では
「市民団体「クルマ社会を問い直す会」の役員で、2003年に長女(当時6)を事故で亡くした東京都品川区の佐藤清志さん(51)も「現行の最高速度を守るよう周知、訴えるのが筋だ」と話した。」
と指摘したことが載っています。

交通安全白書も指摘する高速道での深刻な事故実態

以下は、「平成27年交通安全白書」の「高速自動車国道等における交通事故発生状況」からの抜粋ですが、安全レベルは本来「ゼロ」でなくてはならないのに、極めて深刻な現状が指摘されています。

「高速自動車国道等は高速走行となるため,わずかな運転ミスが交通事故に結びつきやすく,事故が発生した場合の被害も大きく,関係車両や死者も多数に及ぶ重大事故に発展することが多い。このため,死亡事故率は,その他の道路の約2.7倍である。」

同「白書」によると、平成26年中の高速道路での事故件数は1万202件、死者、負傷者はそれぞれ204人、1万8,062人にも上るのです。

白書から作成した、ここ10年の高速道路における死者数および負傷者数のグラフは以下です。
平成17~26年の10年間の高速道路事故での死者数は、2,220人、負傷者数は20万0,779人にも上ります。

(縦軸は死者数、横軸は平成年)

(縦軸は負傷者数、横軸は平成年)

「速度は最大の危険要因」とは小栗教授の言葉ですが、ドイツのアウトバーン(最高速度の規制がありません)について記している下記サイトでの次の指摘は重要です。

「これほどの高速走行が許されるとなると、やはり交通事故は多いのだろうか。 2014年にドイツのアウトバーンで亡くなった人は375人だ。制限速度も取り締まりもある日本の高速道路での同年の死者数は204人。交通事故死亡者全体の中で は、高速道路死者数は、ドイツでは11パーセント、日本は約5パーセントを占め る。それを多いとみるか、危険なわりに少ないとみるかはあなた次第。」

「危険なわりに少ない」とみる立場からの今回の方針は、「成長」神話によりすがり、消費経済と「高速文明」に麻痺し、運輸に支配され、因って「命の尊厳」を忘れた近代社会の悪しき断面かと思います。

交通死傷被害の甚大さ、およびその要因を直視できない社会について、ドイツの社会学者ウルリヒ・ベックは、「今日ほどわれわれが新たな概念を必要としている時代はかつてない」「危険を指摘する人々は『悲観論者』であり、危険を捏造する者であると誹謗される」と、産業化された「危険社会」について警鐘を鳴らしました。(「危険社会~新しい近代への道」ウルリヒ・ベック 法政大学出版局)

この著作の中で、こうも述べています。
「科学に対する批判や、未来に対する不安は「非合理主義」の烙印が押されてしまう。つまりこうである。科学を批判し、未来に不安を抱くことは、諸悪の根源だ。快調に航海している船に波がつきもののように、進歩に危険はつきものだ。危険は何も現代に始まったものではない。危険は社会生活の多くの分野に現れている。交通事故はその一例だ。交通事故による死者は多く、事故によって、毎年ドイツ連邦共和国の中規模の都市がひとつあとかたもなく消えているようなものだ。しかも、人々はそのことに慣れっこになって忘れているのではないか」(p68・69)
「発達した市場社会では、危険が二面性をもつからである。つまり市場社会では、危険が危険であるだけでなく、ビジネスチャンスでもある。危険社会が展開するにつれて、危険の犠牲になる者と、危険から利益を享受する者との対立が高まるという結果を招いている」(p70)

と。

3月24日の「北海道新聞」夕刊には「研究委は、事故状況や実勢速度を分析、取り締まりの徹底など一定の対策を強化すれば、事故が増えず「安全レベルが維持できる」と結論付けたとの箇所がありましたが、
この中のまさに「事故が増えず、安全レベルが維持できる」というフレーズが、麻痺したクルマ社会を如実に表しています。

事故は決してあってはならず、安全レベルは「ゼロ」でなくてはなりません。
速度アップは社会進歩でも何でもありません。

先の小栗教授は、「高速道路『先進国』のアメリカの、人口10万人当たりの交通死者数は日本の約2倍。高速社会アメリカは自動車被害が多発する『安全後進社会』という認識が必要だと思います」と指摘しています。

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