論考・発言

【4】2007/2 法制審議会刑事法部会での意見書および発言詳細

投稿日:2007年2月19日 更新日:

法制審刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会での
北海道交通事故被害者の会として意見表明

以下は、法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会第2回会議(2007年2月19日、法曹会館)において、法務省諮問第82号(※)について、会として意見を述べた際の提出資料(意見書)です。(発言内容については、発言詳細 をご覧下さい。)

※諮問第82号
自動車の運転による過失致死傷事犯等の実情等にかんがみ、事案の実態に即した適正な科刑を実現するため、早急に、罰則を整備する必要があると思われるので、別紙要綱(骨子)について御意見を承りたい。
※要綱(骨子)
第1 自動車運転過失致死傷の罪の新設
自動車の運転に必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処するものとすること。
第2 危険運転致死傷の罪(刑法第208条の2)の改正
刑法第208条の2中「4輪以上の自動車」を「自動車」に改めるものとすること。

法制審部会終了後の報道記事(2007年3月1日 「朝日新聞」)
「自動車運転過失致死傷罪」創設
法制審部会が要綱案、法案提出への詳細は末尾です

法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会
部会長殿

北海道交通事故被害者の会 前田敏章

自動車運転過失致死傷事犯関係の刑法改正要綱について(意見)

北海道交通事故被害者の会は、1999年の結成以来、自主的な相互支援と合わせ、交通犯罪・事故を根絶するための諸活動を続けている自助被害者団体です。

私たちが厳罰化を望むのは、感情に流された「報復」の意識では決してありません。理不尽に、通り魔殺人的被害で命や健康を奪われ、悲惨な状況におかれた 私たち被害者・遺族は、悲嘆と絶望の痛みをわかる当事者だからこそ、同じ被害者を生まない社会を創って欲しいと願い、それが死者への供養になるのでは、と いう純粋な気持ちになるのです。私たちが常に思い浮かべるは「命の尊厳」という言葉です。私たちの願いは、奪われた肉親を、損なわれた健康を元のままで返 して欲しい、それしかありません。それが叶わないのであれば、せめて命を、犠牲を、無にして欲しくないと願い、命の重みに見合う刑事罰が科せられて事故抑 止につながることを望むのです。

私たちは、会が発足して間もなくの2002年以来、「こうした措置が執られていれば、私たちのような犠牲はなかった」という切実な思いを要望事項として まとめ、関係機関に提出しております。その中で、交通事犯の厳罰化については、当初から「自動車運転過失致死傷罪」新設による危険運転全般の厳罰化を掲げ ておりました。そのこともあり、今般法務省が示した厳罰化の要綱案について、大変意義あるものと受け止めております。昨年9月25日、川口市で起きた悲惨 な事件を例に出すまでもなく、今日、多くの国民に重大な死傷被害を与えている交通犯罪・事故の原因は、飲酒やひき逃げだけではありません。法体系の抜本的 見直しを行い、危険運転致死傷罪適用要件の実態に合わせた改訂、飲酒の場合の「逃げ得」という抜け道を許さない方策、そして前方不注意、速度違反など重大 結果につながる危険運転が、命の重みに見合う刑事罰によって裁かれるよう、必要な法整備が為されることを切望するものです。

犯罪白書等の統計資料によると、2005年において生命・身体に被害を受けた犯罪の被害者数は120万7968人に及びますが、このうち96.3%を占 める116万3504人は道路上の交通事故・犯罪に関わる死傷です。こうした事態を異常と認識せず、加害の運転者の立場に偏重した法体系を放置すること は、国民全てが望む、安全・安心の国づくりと相矛盾します。今回の法改正が、「被害ゼロ」の道に確実につながるものとなることを心より願い、要綱案につい ての意見を申し述べます。よろしく取り計らい下さい。

意見1

要綱(骨子)第一の「自動車運転過失致死傷の罪」新設について、刑の上限は7年ではなく、10年以上のより重罰とすべきです。さらに、被害者が死亡した場合については、下限を短期1年以上に引き上げ、罰金刑という選択は削除すべきです。

《 理由 》

自動車運転が危険な行為であるという社会的共通認識があるというべきですから、交通犯罪の場合は、過失犯であってもその結果の重大性に見合う処罰を科すことが、交通事故・犯罪抑止のために不可欠です。現状では、命の重みや被害の重大性に見合う刑罰とはなっておらず、そのことが交通事犯による死傷被害の常態化という大きな社会問題を呈しています。 前回1968年の改正によっても、前方不注意や速度違反など危険極まりない行為による死傷事件が、窃盗や詐欺罪の半分に過ぎない軽い刑で扱われていたことにより、危険な運転で人を死傷させた場合でも「事故だから仕方ない」というような深刻なモラル低下が蔓延し、自動車運転による死傷事件の被害数が一貫して増えていることは明白です。

自動車が実際に凶器ともなっているのに、それが自覚されていないのは、自動車運転免許が不適格者にも容易に交付されるという制限解除要件が緩やかであったり、運転行為が社会生活上必要な一般的日常的行為となっている側面があり、運転者に意識されづらくなっているだけです。本来許可制のもとで交付を受けている運転行為であり、違反行為や重大過失があれば相手の命をも容易に奪うという、高い注意義務を伴うことを承知しての行為ですから、重く罰せられることは当然です。
不可逆的な死傷という重大結果を招く行為であることを重要視して下さい。法治社会において、法が第一義的に尊重し守るべきものは人命であり、それ以上のものはないはずです。安全軽視の危険運転行為が根絶されるよう抜本的な改正をすべきです。5年前の危険運転致死傷罪新設が、その適用要件のハードルの高さの問題から実効的に作用せず、抑止力にはならなかったという轍を踏まないためには、要綱案の7年では軽すぎます。上限を少なくとも10年以上に引き上げるべきです。7年にとどまるのであれば、同じ自動車運転によってひきおこされる危険運転致死傷罪(最高懲役20年)との著しい格差も画然と残ります。

同時に、自動車運転における過失行為を特別類型として重罰化するならば、致死の結果について罰金刑の選択を許すと,結果に見合わない軽い処罰の余地を認めることになり、厳罰化の趣旨に反することになります。罰金刑を排し、下限を引き上げることにより、他の業務上過失致死との差異を明確にすべきです。

意見2

関連して、2001年の法改正で新設された、刑法211条2項の「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除できる」という「刑の裁量的免除」規定は廃止すべきです。

《 理由 》

「刑の裁量的免除」規定は、検察官による「起訴便宜主義」により、交通事犯の9割近くが不起訴となっている不当な現状を刑法が追認し、さらには自動車運転業務についてのみ免除が設けられることで、交通事犯を一般の業務上過失致死傷罪に比べ軽く扱うという間違った通念が拡がってしまいます。

意見3

要綱(骨子)第二の、対象車両から四輪という限定をはずすことは是非必要です。

《 理由 》

二輪であっても生身の人間に対して凶器であることに変わりはなく、四輪と同様の危険運転をすればこれと同じ危険性を有するからです。

意見4

関連して、2001年に新設された危険運転致死傷罪が、全ての危険運転行為の抑止となるように、その適用要件から「内心的要素」を除外するなど、大幅に緩和する法改正を行うべきです。

《 理由 》

現行の危険運転致死傷罪が危険運転の抑止につながらなかった理由の一つは、その成立要件が厳格で実態に合っていないことです。例えば刑法208条の二②には「人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転」する行為について、「目的」という内心的要素を立証するという極めて高いハードルを設けています。また、同項には「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。」と他の刑法の犯罪には無い要件「殊更に」という、これも内心的要素の立証が要件となっています。

そもそも、「通行中の人または車に著しく接近する行為」や「赤色信号又はこれに相当する信号を無視する行為は、」それ自体客観的に危険な行為なのですから、目的等の超過的主観的要素が無くとも処罰に値すると考えるべきです。

危険運転致死傷罪施行から5年が経過した今、実態を踏まえ、所要の改正を行うことは急務です。

法制審での発言

2007/2/19 (16:30~45)  於:法曹会館

以下は、2007年2月19日、法曹会館にて行われた、法制審議会刑事法(自動車運転過失致死傷事犯関係)部会第2回会議において、会としての意見を述べた発言記録です。  与えられた時間は15分でしたが、文書で提出した意見書をもとに意見を述べ、後半は理不尽に命を奪われた実例を理解してもらうために、遺影を示しながら、10年以上の改正を強調しました。

自動車運転過失致死傷事犯関係の刑法改正要綱について

北海道交通事故被害者の会   代表 前田 敏章

北海道交通事故被害者の会の代表をしています。前田です。意見の機会を与えていただいたことに感謝致します。  最初に強調したいことは、私たちが厳罰化を望むのは、感情に流された「報復」の意識では決してないことです。理不尽に、正に「通り魔殺人的被害」で命や健康を奪われた私たち被害者・遺族は、悲嘆と絶望の苦しさを痛いほどわかる当事者だからこそ、同じ被害者を生まない社会を創って欲しいと願い、それが死者への供養、という純粋な気持ちになるのです。私たちが常に思い浮かべるは「命の尊厳」という言葉です。願いは、奪われた肉親を、損なわれた健康を元のままで返して欲しい。それしかないのですが、叶わないのであれば、せめて犠牲を無にして欲しくない、命の重みに見合う刑事罰を事故抑止につなげて欲しい、そう願うのです。

こうした意味でも、私たちは、誰よりも真剣に交通犯罪撲滅を願い、その方策を考えていると自負しています。私たちの願いと活動内容については、お配りした会報および冊子版「いのちのパネル」に凝縮しておりますので、是非お読み下さい。

私たちは、会が発足して間もなくの2002年に、1年ほどかけて要望事項(配付資料にあり)をまとめました。その中で、当初から交通犯罪を特別類型として厳罰化することを掲げておりました。そのこともあり、今般法務省が示した要綱案については、大変意義あるものと評価しております。昨年9月25日、川口市で起きた悲惨な事件を例に出すまでもなく、今日、多くの国民に重大な死傷被害を与えている交通犯罪・事故の原因は、飲酒やひき逃げだけではありません。法体系の抜本的見直しを行い、危険運転致死傷罪適用要件の実態に合わせた改訂、飲酒の場合の「逃げ得」という抜け道を許さない方策、そして前方不注意、速度違反など重大結果につながる危険運転が、命の重みに見合う刑事罰によって裁かれることを切望するものです。

2005年において生命・身体に被害を受けた犯罪の被害者数は120万人に及びますが、このうち96.3%は道路上の交通事故・犯罪に関わる死傷です。公の道路上で毎日のように、運転者という加害者によって「通り魔殺人的」被害を受ける事件が勃発し、感覚麻痺に陥っているという異常事態を放置せず、「被害ゼロ」の道へと確実につながる法改正となるよう、委員の皆様には、格別のご尽力をお願いするものです。

意見の1です。

要綱(骨子)第一の「「自動車運転過失致死傷罪」新設は大賛成ですが、刑の上限は7年ではなく、10年以上のより重罰とすべきです。さらに、被害者が死亡した場合については、下限を短期1年以上に引き上げ、罰金刑という選択は削除すべきです。

「理由」を申し上げます。

自動車運転がそもそも危険な行為であるという社会的共通認識があるべきですから、過失犯であっても、結果の重大性に見合う処罰を科すことが、交通犯罪抑止のために不可欠です。現状では、命の重みや被害の重大性に見合う刑罰とはなっておらず、そのことが交通事犯による死傷被害の常態化という大きな社会問題を呈しています。

1968年の改正がありましたが、前方不注意や速度違反など危険極まりない行為による死傷事件が、窃盗や詐欺罪の最高刑、懲役10年に対しその半分に過ぎない軽い刑で扱われていますから、危険な運転で人を死傷させた場合でも「事故だから仕方ない」というような深刻なモラル低下が蔓延しているのです。そのことにより、死傷事件の被害数が一貫して増えていることは明白です。

自動車が実際に凶器となっているのに、それが自覚されていないのは、運転免許が不適格者にも容易に交付されていたり、運転行為があまりにも一般的日常的行為となり、運転者に意識されづらくなっているだけです。運転は、許可制のもとで交付を受けている行為であり、違反や過失があれば相手の命をも容易に奪うという、高い注意義務を伴うことを承知しての行為ですから、重く罰せられることは当然です。

不可逆的な死傷という重大結果を招く行為であることを重要視して下さい。法治社会において、法益、法が第一義的に尊重し守るべきものは人命であり、それ以上のものはないはずです。 5年前の危険運転致死傷罪新設が、その適用要件のハードルの高さの問題から実効的に作用せず、抑止力にはならなかったという轍を踏まないためには、要綱案の7年では軽すぎます。上限を少なくとも10年以上に引き上げるべきです。7年にとどまるのであれば、同じ自動車運転によってひきおこされる危険運転致死傷罪(最高懲役20年)との著しい格差も画然と残ります。飲酒運転で奪われた命と、脇見運転で奪われた命、どちらも車の不正使用によって奪われた命であるのに、一方は20年、片方は7年。このような差別があって良いものでしょうか。  同時に、自動車運転における過失行為を特別類型として重罰化するならば、致死の結果について罰金刑の選択を許すことは、結果に見合わない軽い処罰の余地を認めることになり、厳罰化の趣旨に反することになります。罰金刑を排し、下限を引き上げることにより、他の業務上過失致死との差異を明確にすべきです。

意見の2です。

関連して、2001年の法改正で新設された、刑法211条2項の「傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除できる」という「刑の裁量的免除」規定は廃止すべきです。

「理由」です。

「刑の裁量的免除」規定は、検察官による「起訴便宜主義」により、交通事犯の9割近くが不起訴となっている不当な現状を刑法が追認し、さらには自動車運転業務についてのみ免除が設けられることで、交通事犯を一般の業務上過失致死傷罪に比べ軽く扱うという間違った通念を拡げることになってしまいます。

意見の3です。

要綱(骨子)第二の、対象車両から四輪という限定をはずすことは、全く異論がありません。

意見の4です。

関連してお願いします。危険運転致死傷罪が、全ての危険運転行為の抑止となるように、その適用要件から「内心的要素」を除外するなど、適用要件を大幅に緩和する法改正を行って下さい。

「理由」です。

そもそも、「通行中の人または車に著しく接近する行為」や「赤色信号又はこれに相当する信号を無視する行為」は、それ自体客観的に危険な行為なのですから、「目的」や「殊更に」といった超過的主観的要素が無くとも処罰に値すると考えるべきです。危険運転致死傷罪施行から5年が経過した今、実態を踏まえ、所要の改正を行うことは急務です。

次に、いくつかの実態に即し、何故10年以上にこだわるのかについて補充致します。

(前田千尋(当時17歳)の遺影(A4版)を示し)

私の娘は、川口市の事件と同じく、カーラジオ操作で脇見運転をした加害者によって、歩行中に命を奪われました。しかし下された刑は、禁固1年に執行猶予です。これはバイク数台(10万円相当)を盗んだ罪より軽かったということを知り、愕然としました。

(白石乃郁さん(当時13歳)の遺影を示し)

中学2年の白石乃郁さんは、犬の散歩中に前方不注意の車に轢かれ若い命を奪われましたが、やはり加害者は執行猶予でした。当時、ハンターがエゾシカと間違って競走馬3頭を射殺した事件があり、狩猟法違反に問われたその罪は懲役1年に執行猶予がついていました。そのことを知ったご遺族は、娘の命は馬の命と同じなのかと、嘆き悲しみました。

(竹田響ちゃん(当時6歳)の遺影を示し)

校門前のスクールゾーンで下校時間に多数の児童の前で轢かれた竹田響ちゃん。犯人は逮捕もされず、執行猶予という判決を聞いた母親は「私は法律のあり方わからなくなりました」と、司法への不信感を露わにしました。

これらの事例のように、かけがえのない肉親を失い、絶望の淵に落とされた上に、法律や社会に拭い難い不信の念を募らせ、それによって生きる力も萎えてしまう。これが被害者・遺族のおかれている実態です。

この「加害者天国」ともいうべき不当な庇護は、加害者が人間として当然為すべき反省や謝罪という思考と行動の回路も閉ざしてしまいます。

(白倉美紗さん(当時14歳)の遺影を示し)

中学3年の白倉美紗さんが犠牲になった事件では、制限速度を28.8キロ以上オーバーして反対車線ではねたという危険運転でありながら、一審は執行猶予。現在高裁で審理中ですが、法に「護られ」ている加害者は嘘の供述を繰り返し、何らの反省もなく、遺族に向かって「死んだ人間に何をしたってわからないでしょ」と言い放ちました。

 冒頭、感情的発露からの厳罰化の要望ではないと言いました。しかし、こうしたあまりに不当でアンバランスな法の下では、報復的感情すら生まれるのではないかと懸念されます。

私は、10年以上という刑罰の引き上げは、これまでの悪循環、つまり、軽い刑がモラル低下を招き、それによって事件事故が多発し、捜査の徹底や防止策が後手にまわるといういわば悪魔のサイクルから脱却する最良の策と確信します。

厳罰により、注意義務が徹底すれば事故が減り、科学的捜査と原因究明、そして未然防止策を徹底させることができるでしょう。再犯も減り、命の大切さが社会により意識されると思います。この安全、安心のサイクルへと踏み出す大きな一歩が10年以上の致死傷罪新設です。

「事故だから仕方ない」という人命軽視の風潮が深く沈潜した社会の意識を変えるのは容易ではありません。救護義務違反を5年から一挙に10年とする法案も提出されています。 どうか英断を下し、10年以上に踏み込んだ改正をしていただきたいということを再度申し上げて意見と致します。

【 法制審後の報道記事 】2007年3月1日 「朝日新聞」夕刊

「自動車運転過失致死傷罪」創設
法制審部会が要綱案
法案提出へ

法制審議会の刑事法部会は「自動車運転過失致死傷罪」を創設する要綱案をまとめた。 5日の総会で答申されれば、法務省は関連法案を国会に提出する。交通事故の刑事責任は従来、業務上過失致死傷罪(業過)罪で問われてきた。新たな罪の創設は、「だれでも加害者になりうる」という過失犯への刑のあり方の模索と、遺族や被害者側の「なぜこんなに罪が軽いのか」という声の高まりとのせめぎ合いの着地点だ。

最高刑は懲役・禁錮7年。業過致死傷罪の上限を2年上回る。業過罪の対象は医療過誤や機械の操作ミスなど幅広いが、最近は上限の5年に近い判決のほとんどは自動車事故だった。「危険運転致死傷罪」(死亡時懲役20年以下)が創設されたものの適用範囲は狭く、遺族側から業過罪の上限の引き上げを求める声が強かった。 刑法は故意犯の処罰が原則。本来は例外の過失犯をどう厳罰化するのかをめぐり、浮上したのが業過罪から切り離す方法だった。法務省は「自動車自体の危険性や、事故は本人の行為に多分に負うという特性から、切り離すのは合理的だ」と判断。遺族側には10年以上の上限を求める声も強かったが「過失犯の枠組みの中で業過と2倍の開きを作るのは難しい」(法務省)。業過全体の位置づけを考え直す時間はなく、「緊急立法的な措置」として踏み切った。(市川美亜子)

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