書籍のご案内

書籍紹介 「脱・スピード社会」~まちと生命を守るソフトカー戦略~

2009年4月30日

「脱・スピード社会」~まちと生命を守るソフトカー戦略~

発行所:清文社、2009年4月20日 発行

■著者:小栗幸夫(千葉商科大学政策情報学部教授、ソフトカー・プロジェクトチーム代表、)
■本の紹介、購入の案内はこちら→「脱・スピード社会

■帯タイトルより
 危機の今こそ、自動車のスピードについてオープンに語ろう!
 風とともに、あらゆる世代の人々に贈る、著者渾身の研究ドキュメント!
 過去100年の自動車と都市開発の歴史をたどり、18年間の構想と2000年からの実践(ミレニアム・プロジェクト、愛・地球博、全国キャラバン、道路交通被害者との交流、オバマ氏への手紙)を伝え、未来へのソフトカー戦略を示す。

 「スピードへの幻想から人々を解放する提案に、世界は眼を見張るでしょう」(ブリジット・チョードリー:イギリス・ロードピース創設者)

アマゾンのレビュー投稿原稿 (投稿日 2009年5月28日 投稿者 前田敏章)
 「静かに進行する大虐殺」、これが世界で1年間に120万人の死者、負傷者5000万人とも言われる道路交通被害を表す的確な言葉です。しかし、この非可逆的で甚大な犠牲は、時間的空間的に散発して起こることから、効率、開発、そしてスピードの価値を優先して押しつけられた現代社会において、人々は容易に感覚麻痺に陥り、日常の「仕方のない事故」とその重大性を見過ごします。
 著者はこの被害を、コミュニティや自然の破壊と併せ、自動車の高速化と普及がもたらした「20世紀のディレンマ」と捉え、自動車が生まれてから120年、スピードに酔い理性を失ってきたその歴史と、課題克服への道筋を説きます。実践的にも、政府のミレニアム・プロジェクトにも採用された「ソフトカー(速度制御カー)」の開発と普及活動(社会実験)、被害遺族との貴重な交流などがドキュメントとして読みやすく書かれています。
 かくいう私は、前方不注視の運転者により17歳の長女を喪った「遺された親」です。娘の無念を想い、交通死傷被害「ゼロ」の社会をと願い、高校教育に携わる身なので「スローライフ交通教育」の実践も手がけているのですが、教材ともなるこの本に出会えたことで、大いなる希望と勇気を得ているところです。体験講話などでも「クルマは速く格好良く走るものではない。理性でクルマの属性(有用性)を見直そう」と訴えていますが、日本における身体犯被害(2006年は約114万人の死傷者)の96%は交通事犯という現実を直視するとき、速度制御の社会的システム構築は急務です。
 本書は、自身のライフスタイル見直しに沢山のヒントを与えてくれるとともに、21世紀の真に安全で豊かな社会へ、世代や国を超えてつながるものです。

書評に代えて
掲示板サイト 世界道路交通犠牲者の日・つながるプラザ への書き込みより

「読み中ですが、素晴らしいです!」
投稿者:前田敏章 2009年4月19日

 心待ちにしていた小栗先生の本「脱・スピード社会」を手にしました。未だ読み中ですが、素晴らしいの一言です。全部読み終わる前に感想を書きたくなりました。帯タイトルにある通り、小栗先生の「こん身の研究ドキュメント」であり、チョードリーさんの「スピードへの幻想から人々を解放する提案に、世界は眼を見張るでしょう」というメッセージは的を射ています。

 交通事犯被害者の会にとっても、そして私が幾人かの仲間と続けている「スローライフ交通教育」のとりくみにとっても、大きな援軍であり、教材そのものになる労作です。(私は、明後日も札幌市内高校で予定の交通安全講話を行うのですが、最近の講話では、レジュメにソフトカーのことを明記するとともに、朝日新聞の井上記者の記事「安全な車 遺族と作る」(p370)などを資料として使っているところです)

 昨日は上京して、11月の犯罪被害者週間全国大会の実行委員会に出席していましたが、東京に向かう飛行機の中で拾い読みした「社会革新のためのモデル」(p426)の図表が眼に入り、得心させられました。ソフトカープロジェクトの活動の意義とともに、「ハートバンド」とういう全国の被害者団体(現在19団体)が、緩やかですが、集まり交流し、支援者とともに現状と課題を明らかにして全国大会で広く訴えることの大切さを再認識させられたのです。そして今日、帰りの飛行機の中で、第1章から読み始めたのですが、例えば、第2章1-5の[3]「技術の平和管理」のページでの指摘など、新たな視点を与えてくれる貴重な論考ばかりで、これからのページが楽しみです。

 さらに・・・
 拾い読みで先に読んだ第7章で、私たち交通犯罪被害者との交流の過程を優しい眼差しで丁寧に書いてくれたことに感激しながら、最終節の「おわりに」の「風たちへ、風たちに」の項で、「この本を、突然、巨大な衝撃の中で未来を奪われてしまった、幼い命、若い命たちに捧げたい」との一文に接したとき、感極まって涙がこぼれました。それは小栗先生への尊敬と感謝の気持ちと同時に、亡き娘の無念を想い、遺された者の使命を改めて強く感じたからと思います。

 この本から沢山のことを学び、そしてこれからの活動に生かしたいと思っています。早速札幌の本屋で、店頭にあった一冊を買い求め、二女(亡き長女の妹)に託しました。私も「さわやかな風」と一緒に、「脱・スピード社会」の理念への共感を世界のすみずみに届け、広げる役割を精一杯果たしたいと思ったからです。二女もしっかり受け止めてくれました。

 もう一つ。最終ページで、「私が残念なのは、交通被害で重傷を負い、その傷みの中で生き続けている方々とまだお会いしていないことだ。この本はそうした苦難の中にいる方々やその家族の方のものでもある。・・・」と述べられていることですが、先日発行した北海道交通事故被害者の会の会報29号12pに掲載している米内隆輔君のご家族には、早速この本のことを伝えたいと思っています。

返信投稿者:小栗幸夫 2009年4月20日

 前田さんの素晴らしい読まれ方と心温まる感想に感動しています。この本は厚くて読み始めるのに抵抗を感じるかもしれない、しかし、拾い読みしていただければその部分だけでも理解していただける、そして、部分と部分は関連している、全体をを通して読むとスピード社会の構造と、それから脱する意義が理解していただける、そういうつもりで書き、構成しました。前田さんはそのことを的確にご理解いただき、感想を述べていただきました。

 おっしゃるとおり、この本は、突然の衝撃の中で未来を奪われた幼い命、若い命に捧げるものです。私と同世代、あるいは、年上の方々は、この本をいろいろな場所に届ける協力者になっていただける。同時に、多くの重傷の方々、そのご家族のもの。本の終わりに書いたこれらのことは、私がかなり厳しい本の作成過程(主に時間的な厳しさ)で書いたもので、早朝寝覚めて書いたものです。私がどうしてもこの本を書かねばならないと思ったことです。

 「社会革新のモデル」も「技術の平和管理」も、これまでしてきたこと、心ある方々がされてきたこと、これからのすべきことを短くまとめるとどう言えるか、と考えて記したものです。前田さんはそれらのすべてに気づいていただいています。書いたものとしてこれほど嬉しいことはありません。

 ぜひ、みなさんも拾い読みを、そして、感想をお伝えください。ソフトカー・ダイアリーに転載させていただき、「脱・スピード社会」の理念をさらにみんなで議論し、共有していければと思います。

 前田さん、本当にありがとうございます。そして、また、感想や反響をお伝えください。追記:米内隆輔君の卒業おめでとうございます。

 ご家族、病院、学校の皆様のご努力に敬意を表します。同時に、このような不条理を個人の努力や善意で克服することには限界があり、あまりにその犠牲が大きいと思います。この不条理の発生を根絶することこそ必要。
 隆輔君、ご両親、病院、学校の皆様、そして、HBC報道部山崎裕侍さんによろしくお伝えください。

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